酒蔵インタビュー 伝統的酒造りがユネスコ登録を受けて
伝統的酒造り ユネスコ登録
令和6年12月5日に日本の伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、宍粟市内にある2つの酒蔵に、今後への期待などを聞きました。
酒蔵インタビュー
山陽盃酒造株式会社 | 老松酒造有限会社 |
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壺阪雄一 専務取締役 |
前野久美子 専務 |
伝統的酒造りの特徴は?日本酒造りは「麹」の力で米のデンプンをブドウ糖に変える「糖化」と、糖と酵母によるアルコール発酵を1つのタンクで同時に行う「並行複発酵」と呼ばれる非常に複雑な工程を踏みます。 他のアルコール飲料と違うの?ワインの製造では原材料に糖が含まれているため、そのままアルコール発酵させることができます。また、ビールでは麦芽糖を作る工程とアルコール発酵の工程が別になっています。 日本酒造りはむずかしい?世界で造られているアルコール製造の中でも日本酒はトップクラスに難しい技術で造られています。 麹(こうじ)の力が重要?今回のユネスコ登録では、特に「麹」を使った酒造りが注目されました。日本酒造りで使われる麹菌も日本由来のものです。日本酒造りには「一麹、二酛、三造り」という格言があります。1番大事なのは麹づくりといわれ、麹がよくないと美味しいお酒はできません。もちろん全ての工程が大切ですが、中でも麹造りは重要な工程で難しさと面白さがあります。 ユネスコ登録で注目が高まる?2013年に和食が登録され、世界中に和食が浸透していきました。今回、伝統的酒造りが登録されたことで、日本酒の世界的な地位や認知度がさらに高まると期待しています。同時に、日本酒造りに希望をもった若い作り手が日本酒の業界に入ってきてくれるとうれしい。 「発酵のまちづくり」の弾みになる?この地域で進められている日本酒や発酵文化を生かした取り組みにとって、今回のユネスコ登録が少し追い風になるのかなと思います。宍粟には約1300年前の奈良時代に編さんされた「播磨国風土記」に日本酒発祥の記述が残る「庭田神社」があります。それはとても貴重なことだと感じています。そのことが市民の皆さんに広まってほしいなと思います。 どんな取り組みに期待している?この地域に住む人が日本酒発祥の地であることに誇りをもっていただけるような広報や周知をしていくことができればと思います。また、発酵による食育、酒かすや発酵のまちづくり推進協議会でも取り組んでいる甘酒のPR。この甘酒には庭田神社で採取された麹菌が使われているので、地域と発酵をリンクさせながら、食育が進められればと思います。また、そのことで日本酒への関心が高まればと思います。 市民の皆さんに伝えたいことは?日本酒には長い歴史がありますが、その歴史の中で“今”が1番美味しいと思います。培われた技術や経験を生かしながら美味しいお酒づくりの研究が進められており、スパークリングやアルコール度の低い日本酒造りなど、新しい技術が取り入れられています。日本酒にネガティブなイメージをもたれている人にも、あらためて飲んでいただいて、“今”の日本酒を知ってほしいなと思います。 |
日ごろ、酒造りで感じていることは?先日、この地域の高校から依頼があり、高校生に日本酒の製造工程などを講義しました。他の高校でも発酵食を生かしたグルメの開発を授業で行うなど、日本酒や発酵食への関心が高まっています。 酒造りは大変?老松酒造は創業してから250年以上になりますが、老舗を守っていくのはとても大変です。酒造りは低温で少しずつ発酵させていきますが、温暖化の影響で気温が上がり、美味しいお酒を提供していくために常に試行錯誤しています。 人口減少の影響は?人口減少や若者の酒離れ、企業数の減少などでお酒を飲む人や機会が少なくなっていると感じています。そんな中、発酵食メニューが食べられる「発酵ダイニング」をしていたのはよかった。発酵食を目当てに神戸や大阪、鳥取や岡山など県外からお客様が来てくれています。食事の後、お土産に日本酒を買って帰ってくれます。 発酵ダイニングの客層は?客層は30代~60代まで幅広いですが女性が多いです。発酵ダイニングでは日本酒造りに使う麹や製造過程で作られる酒かすなどを使った食事を提供しています。麹はものを柔らかくしたり、臭みをとったりします。体にもよくて免疫力を高めてくれるので、健康に興味がある人など、そういったところも人気の要因だと思います。 ユネスコ登録の感想は?日本の酒造りが世界に認められるのは酒蔵にとってうれしいことです。宍粟の2つの酒蔵「山陽盃酒造」と「老松酒造」はとても近く、これだけ近いのは日本でもあまりないのでは。宍粟の発展には交流人口の増加は重要です。観光客が少しでも増えるよう貢献できればと考えています。 日本酒ファンの増加に期待?日本国内でいろんなお酒が造られています。老松酒造においても特徴のある多様なお酒を醸造しています。日本酒の認知が高まると、いろいろなお酒を味わいたいというニーズもあると思います。老松酒造では300ミリリットルの小さめなサイズの販売もしています。少し酸味のあるお酒や、飲んでグッとくる味など、差別化している日本酒を味わってみてほしいと思います。また、ダイニングで提供している甘酒、もろみ、ヨーグルトなどの発酵食品も販売しているので合わせて味わってほしいと思います。 市民の皆さんへ以前はお酒でのコミュニケーションも多くありました。飲みすぎやハラスメントはもちろんダメなことですが、人間関係が希薄化しつつある社会の中で、日本酒が縦と横をつなぐ役割、気持ちの良い人間関係をつくるために役立てばうれしいです。 |
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更新日:2025年01月12日