宍粟のオオサンショウウオ
オオサンショウウオの生態
「オオサンショウウウオ」という生き物をご存知でしょうか。
ふだんの生活ではあまり目にすることはありませんが、世界最大の両生類として知られ、宍粟市内の河川にも生息している生き物です。
数千万年前からほとんど姿を変えず、「生きた化石」ともいえる原始的な生き物です。
体色は、茶色に黒い斑点が散らばるものが一般的ですが、個体によっては黄色がかったものや全身が黒いものもみられます。
目はどこにあるのか分からないほど小さく、対照に非常に大きい口が特徴です。
地域によって呼び名があり、「ハンザキ」「アンコウ」という別名がよく知られています。
「ハンザキ」の由来は、口を大きく開けた様子が体が半分に裂けたように見えるとする説、体を半分に裂いても生きていられるほど生命力があるため、とする説などがあります。
「アンコウ」もその口の大きさからくる呼び名で、深海魚のアンコウが名前の由来ともされます。
「人間の赤ちゃんの手」と言われることも多いオオサンショウウオの手。
指の数は前足が4本、後ろ足が5本と両生類特有のからだを持っています。
生命力が強く、ちぎれた指や尾は数年かけて再生することが分かっています。
手で掴んだり水中で踏ん張ったりする力はあまりありませんが、あごの力が強く、数十センチ程度の段差ならあごを使って乗り越えることもできます。
市内では70センチ前後のものが最も多く保護されますが、大きい個体では1メートルを超すこともあります。
雑食性で、川魚やサワガニ、昆虫、小型の動物など色々なものを食べます。
栄養が維持できれば生涯にわたって成長を続けることが分かっています。
寿命は80年とも100年以上とも言われていますが、はっきりとは分かっていません。
寿命が長いため、飼育する人間よりも長生きするためです。
噛みつく力が非常に強く危険視されることもありますが、基本的にはとてもおとなしい生き物で、こちらから手を出さなければ攻撃されるようなことはありません。
人間とオオサンショウウオとのつながり
歴史上その名がみられるのは古く、平安時代の医学書「本草和名」にはサンショウウオとみられる生き物「はじかみいを」の記述があります(はしかみうお=山椒魚)。
江戸時代には、ドイツ人医師シーボルトがオランダへオオサンショウウオを持ち帰ったことで、国際的にその存在が知られることとなります。
オオサンショウウオの仲間としては、中国大陸のタイリクオオサンショウウオ、北米大陸のアメリカオオサンショウウオ(ヘルベンダー)などがありますが、オオサンショウウオは日本固有種でそれらとは異なる種になります。
現在国内では岐阜・愛知県以西の本州、四国・九州の一部に生息が確認されています。昭和27年には種そのものが国の特別天然記念物に指定されました。
普段は河川の岩の隙間や水草の下などに巣穴をつくり生活していますが、夏から秋にかけて産卵のため上流へとさかのぼって移動する習性があります。
その際用水路や田んぼなどに迷い込むことで、人目に触れる機会が多くなります。
用水路などで発見された場合、担当職員が現地へ向かい一時的に保護します。
体長や体重などを計測し、写真を撮影した後、個体識別のため専用の注射器でマイクロチップを埋め込みます。
埋め込んだあとは、本来の住み家である川の本流へと返します。
トローバン社製インプランター・マイクロチップ。
リーダーで読み取ることで、個体番号が画面に表示されます。
なお、写真のものは実際に使用しているチップとは規格が異なります。
マイクロチップは直径わずか2ミリメートル、長さは1センチ弱しかありません。
例えばチップを埋め込んだ個体を数年後に保護し測定することができれば、その間にどれだけ成長したか、どれぐらいの距離を移動したのかといったデータを得ることができます。
このデータは、オオサンショウウオの普段の暮らしを知ることができる貴重な材料となります。
生態系の保護
京都の鴨川では、外来種のチュウゴクオオサンショウウオと国産のオオサンショウウオが交雑し、ハイブリッド種(交雑種)が増加する問題が発生しています。現在鴨川水系では、生息している個体の9割もが交雑あるいは外来種であるというデータもあります。
生態系は非常に微妙なバランスにより成り立っています。ある生物が減少・絶滅することは、他の動植物の増減にもつながり、ひいては環境の変化へとつながります。河川や山林の環境の変化は、人間の安全な生活にも大きな影響を及ぼすこととなります。
生態系を保護することは、現在の人間の生活環境を維持することにも大きく関わっています。オオサンショウウオはいまだに謎が多い生き物ですが、今後研究が進むことで、自然と人間のつながりについても様々な情報を提供してくれることでしょう。
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更新日:2019年08月20日